最高裁判所第一小法廷 昭和38年(オ)980号 判決 1965年10月21日
上告人
長岡喜文
ほか一名
右法定代理人親権者
長岡忠正
同
長岡高子
上告人
長岡忠正
右両名代理人
清家栄
被上告人
岡山義光
被上告人
岡山ツヤ子
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負拠とする。
理由
上告代理人清家栄の上告理由第一点について。
本件事故の加害者が岡山通憲であることを認めるに足る証拠はない旨の原判決(その引用する第一審判決を含む)の認定判断は、その挙示する証拠関係に照らして首肯でき、原判決には所論違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用できない。
同第二点について。
原判決は、訴外松本俊寛が本件事故の加害者につき判示の如く明示し、また後に前言を翻してその理由につき判示の如く述べたことは、原審における被控訴人岡山ツヤ子(被上告人)の尋問の結果により認められるけれども、右ツヤ子の供述をもつてしても未だ本件加害者が誰であるかを証明するに足りない旨を判示したものであることは、原判文自体で明らかであつて、原判決には所論違法は認められない。論旨は原判決を正解しないでこれを非難するものであつて、採用できない。
同第三点について。
民訴法二八九条による宣誓能力のない者に誤つて宣誓させた上なした証人尋問は、違法な手続によるものではあるが、宣誓させて尋問すべき証人を誤つて宣誓させずして尋問した場合と異なり、訴訟法上有効であるから、責問権の放棄を論ずるまでもなく、裁判所はその証言が虚偽の陳述でないと認める限り、これを証拠として採用するを妨げないと解するを相当とする。
本件記録によれば、第一審が証拠調の当時一三才の証人菅元忠明に対し民訴法二八九条一号に違反して宣誓させた上なした証人尋問を原審が証拠として採用したことは認められるけれども、原審が右証言を虚偽の陳述でないと評価して採用したことは原判文上明らかであるから、右証言を証拠として採用したからといつて、何ら所論違法は存しない。論旨は右と反対の見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(長部謹吾 入江俊郎 松田二郎 岩田誠)